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こちらの続きです。

思いがけず訪れた広瀬良二作品展「隙間が育ったので」(2021年4月14日(水)~5月9日(日))にて出会った作品たちに心惹かれた私。

購入したい気持ちが高まっていき、どの作品を選ぼうか迷っていると、声をかけてくださる方がいらっしゃいました。在廊していた広瀬良二さんでした。


「ここへは、たまたま立ち寄られたんですか?」

正直にそうだとお伝えし、せっかくの機会なので色々伺ってしまいました。


「ぐりぐりと力を入れて塗っていると、”自分がある”と感じられる」

まずクレヨンが使われていることに驚いたと伝えると、「子どもが使うようなものなんですが、この30色のサクラクレパスをずっと使っていて」と聞いて、ますます驚いてしまいました。懐かしい。

広瀬さんが使っている「サクラクレパス」。使い込まれています。

「汚れてるので、塗っていると黒い色が付いちゃったりするんですけど、私はそれも味になると思っていて。」

つい油絵具は使わないのかと聞くと、どっちが好きと言う訳ではないけれど、と前置きされた後で、クレヨンはたくさんの道具が必要なくて、思い立ったらすぐ作品づくりに取り掛かれるところが良いのだと教えてくださいました。

また、「ぐりぐりと力を入れて塗っていると、”自分がある”と感じられるというのもあります」と広瀬さん。

今回の個展の作品には、古い印刷物や古い本を破って(!)、その上にクレヨンを塗り重ねているものもあるんだそう。クレヨンで、元の印刷部分が見えなくなるほど厚く塗れるといいます。よく見るとたしかに、薄っすらと印刷されていた文字が透けて見える部分がありました。


自分の中にある言葉に出来ないものを、誰かに伝えたい

表現の原動力を伺うと、「なんなんでしょうねえ」と仰った後、「自分の中にある、よくわからないもの、言葉に出来ないものを出したいということかもしれません。それを”誰かに伝えたい”という気持ちがあるんでしょうね」と教えてくださいました。

「なので、あなたにも声を掛けてしまったんです。やはり作品を見てもらえると嬉しい」と気さくに仰ってくださいます。


なるほど、自分の中から”出す”だけではなくて、”誰かに伝わって”こそ得られる喜びがあるのですね。

「自分はたまたまそれが、こういう表現だった、ということなのだろうと思います。でもそれは作品づくりに限らなくて、人の営みのあらゆることに通じるんだろうと思うんです。」


墨のような黒色から淡い水色へのグラデーションがいくつかの作品に見られて、特に惹かれたことを伝えると、「そう言ってもらえると嬉しいですね」と広瀬さん。
「色はあまり使わなかったんですが、最近は使うようになってきました。暗い色を使うことも多いかもしれません。」
様々な色が使われた1つの作品を差し、「この絵も色んな色を使っていますけど、明るい絵じゃないかもしれないですよね、暗い絵なんじゃないかなあ」と仰います。ご自身の作品なのに、「じゃないかなあ」という言い方なのが面白いですねと、つい思ったまま言ってしまいました。


悩んだ末に私が買ったのが、その作品。古書の紙に色んな色のクレヨンが長方形に塗られた絵です。

『色彩の隙間』広瀬良二(22.3×14.9cm、クレヨン・古書、2021年)右下の辺りなど、よく見ると印刷文字が透けて見える部分も。

選んだ理由は、色彩の融合を堪能できる作品であるのと、作者である広瀬さんでさえ絵の印象を断定されなかったように、その時々で色んな感じ方ができるのではないかと思ったからでした。
「他の作品もほしいんですけれど…」と未練をこぼしつつお支払いすると、「初めて買われるということですし、まずは1つでいいと思いますよ」とお店の方が笑顔で応えてくださいました。思いがけず商売っ気を感じない言葉をかけていただき、心和むひと時でした。


***


後日伺ったお話によると、私が絵を購入した後に別の方が作品を気に入り、販売済みだと知ってたいそう悔しがられたんだそう。それも、私が去った10分後のこと。あの時買い逃していたらと思うと、改めて”出会い”だったのだなと、しみじみ思いました。


お店の方に、額装あり・なし、どちらも良さがあると教えていただきました。ひとまずそのままで。合いそうな額を探すのもたのしそうです。



お家に来てくれたこの絵、そして作品名や個展名にもある"隙間"と、これからどんな時間を過ごせるのか。たのしみです。



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〔広瀬良二プロフィール〕
90年代、東京渋谷でusedの家具・インテリアの店Out Of Styleを経営。
古道具素材の鉄や気を使った照明オブジェをつくり始め、その後立体、平面作品を制作。
Instagram:
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〔アルスクモノイ ARSKUMONOI〕
神楽坂の古書店。アート・ファッション・写真集・デザイン・海外文学・詩・哲学・サブカル・紙もの等、見ごたえのある品揃え。カウンターでドリンクもいただけます。
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(※作品とカタログ写真の公開について、広瀬良二さんとアルスクモノイさんのご許可を得ています。)