人は何かを伝えるとき、言葉という手段を使っています。
その逆に、誰かの伝えたいことも、その大部分を言葉で受け取っています。

人と人を繋ぐ言葉。
人はコトバでどう繋がるの?
こんなクエスチョンを、インタビューを通して探っていくこの企画。
のんびり屋なので、初回からはや数か月。今回のインタビューはこちらの方です!


【言葉で見つける自分スタイル】



半歩先行くマダムのスタイリングvivra-style・keikoこと、上林恵子(かんばやしけいこ)さん。ここ、ミモレ編集室の1期生だった方です。

デザイナー、パタンナーとしての経験を活かし、パーソナルスタイリストとして活動するほか、昨年からは、オンラインのファッション講座で講師も務めています。ビブラさんのオリジナリティ溢れるスタイルに憧れる私も、生徒の一人です。

ファッションって感覚的なものだから、言葉で表すのが難しいなと感じることがあります。例えばコーデの感想を伝えるのにも、「可愛い」「キレイ」「素敵」「カッコイイ」……バリエーションは決して多くはありません。

ビブラさんは言葉にしづらいファッションというものを、どんな風に伝えているのでしょうか?楽しい講座の舞台裏には、どんな工夫があるのでしょうか?

さぁ、コトバにまつわるお喋りの、はじまりはじまり……。



具体的に質問できる人はほとんどいない


悠:ビブラさんはパーソナルスタイリストとして活動されているのですよね?

ビブラさん:そうなんです。カウンセリングで、それぞれのお悩みに合わせたアドバイスをさせてもらっています。

悠:どんな相談が多いのですか?

ビブラさん:実は具体的に悩みや質問を言える人って、ほとんどいないんです。「なぜ似合わなくなったのか……」とか、「いい服を買っているのになぜ褒められないのだろう」という方もいましたね。

悠:そういう漠然とした質問を、アドバイスに結び付けていくには、どんなやりとりをするのでしょうか。

ビブラさん:まずはね、「どういう風になりたいか」「どういう風に見られたいか」を自分で言葉にしてもらうんです。なりたいイメージや、好きな有名人を挙げてもらって、ではその人ってどういうイメージ?どこが好き?その人のどこになりたい?って質問をしていくんです。

悠:考えることがいっぱいありそうですね……!

ビブラさん:そうですね、でも自分の好きなものやイメージがボヤンとしているから、ピンポイントで物が選べないんだと思うの。そこがはっきりすると、次にお買い物へ行った時に選び方の変化に気付かれると思いますよ。





何を伝えて、何を伝えないか


昨年から始まったオンラインのファッション講座は、ビブラさんにとって初の試み。カメラに向かって話す向こう側で、実はスタッフさんがうなずいてくれることもあるのだとか。

悠:一方的に話をするのって難しそうですね……。

ビブラさん:不特定多数の人に向けて、相手の顔が見えない状態で講座をするのは初めてなので、何を伝えて、何を伝えないかという選択が難しいですね。体型も年齢も好みも違う人が見てくださっているので、その中間を取っていくというか……。

悠:本当は伝えたいことがあるのに、取捨選択するもどかしさもあるのですか?

ビブラさん:ありますよ。でもね、情報過多になってしまって、より迷ってしまうこともあると思うんです。だから出来るだけシンプルに伝えるようにしています。ファッション用語はよく変わるから、その解説も加えるようにしていますね。カタカナや専門用語が多いとそれだけで「分からない」って感じる人もいるでしょう?

悠:たしかに、きっと苦手意識があるからこそ講座を見ている方もいますよね。




デザイナーとしてお仕事されていた頃のビブラさんは、アパレル企業としてのデザインを尊重しながらも、自分が大切だと思った部分には妥協せず徹底的にこだわったのだとか。


「ボタンホールとかね。誰も気が付かないような部分なのよ。」照れた笑顔を見せつつお話するビブラさんでしたが、そのバランス感覚は講座にも表れているのかもしれません。



自分でファッションを選べるように


悠:講座の最初にはワークシートもありましたね。自分の好きなパーツはどこ?など、考えたこともない質問があって面白かったです。

ビブラさん:講座のワークシートは、カウンセリングで書いてもらう質問の一部なんです。言葉にしようとすると、すごくよく考えるでしょう?自分でそれまで気付かなかったことに気が付くときもあるし、言葉にするって大切なことだと思うの。


こうしてお話を伺っていると、ビブラさんはファッションを伝えるために、先導して「言葉を話す」というよりも、相手の「言葉を待つ」ということを大事にされているように感じます。


ビブラさん:例えば「恵子のファッションチェック!」のようにして、コーディネートをその場でガラッと変えることもきっと出来ると思うんです。でもそれだと結局一人になったときに自分でコーディネートすることが出来ないと思うの。だから、自分でファッションを選びながら磨かれていくっていうことを伝えていきたいし、それが私のテーマなんです。





悠:最後に、ビブラさんが人と繋がる上で、大事にされていることを教えていただけますか?


ビブラさん:「距離感」、かな?親しき仲にも礼儀ありじゃないですけど……。

悠:近づきすぎず離れすぎず、ということですか?

ビブラさん:「人と接していて程よい距離感を保つ」ということかな?家族であっても友達であってもね。相手は自分の所有物ではないし、入り込み過ぎない。それかな?




パーソナルスタイリストとしての活動も、オンラインでのファッション講座も、あくまでその人自身の好きなものやイメージを大切にされているビブラさん。
 
たしかに、ファッションは言葉で表現しづらいものです。でもそこを敢えて言葉にしていくことで、その人のお洒落がグンと広がり、魅力を引き出せる。ビブラさんのお話から、コトバの持つ可能性を教えていただきました。


インタビュー中、終始誠実に答えてくださる「距離感」には、安心感があふれていました。ファッションの相談以外にも、何かお話したくなってしまいそう。
もしかしたらビブラさんの持つ「距離感」は、相手の言葉をも引き出してくれるのかもしれません。

人はコトバでどう繋がるの?私の旅はまだまだ続きます。


■本日のおすすめ司書箱
鷲田清一『たかが服、されど服 ヨウジヤマモト論』
「わたしはなぜヨウジヤマモトを着るのだろう」と問う哲学者の一冊。
https://amzn.to/345rUSI
皆川明『ミナを着て旅に出よう』
ミナの服作りに込められた、デザイナーの言葉。
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167900632


▼ビブラさんInstagram

https://instagram.com/vivrastyle_keiko


▼人はコトバでどう繋がるの?#1

https://mi-mollet.com/articles/-/27875