『祝婚歌』という詩を知ったのは、10年前の自分の結婚式のとき。
人前式の司会を担当してくださった方が「よろしければおふたりに贈りたいので朗読させていただけますか?」と紹介してくれたのでした。

先日、10年ぶりに、茨木のり子さんの散文集『一本の茎の上に』でこの詩に再会しました。
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祝婚歌の作者は詩人の吉野弘さん。
『風が吹くと』という詩集に収められたこの詩は、茨木のり子さん曰く

"肩の力が抜けていて、ふわりとした軽みがあり、やさしさ、意味の深さ、言葉の清潔さ、それら吉野さんの詩質のもつ美点が、自然に流れ出ている"。


若い二人へのはなむけとして書かれたのに、結婚10周年によむのも、銀婚歌としてもふさわしいなあと思う詩なのです。

結婚式で引用されることが多くなり、使用料は?という問い合わせがあったときに
「これはぼくの民謡みたいなものだから、この詩に限ってどうぞなんのご心配もなく」と答えたという吉野弘さん。

"文学畑の人々に読まれ云々されることよりも、一般の社会人に受け入れられることのほうを常に喜びとする"方だったのですね。


祝婚歌

二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気づいているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格かま自分にあったかどうか
あとで
疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり    ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で    風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと    胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい



私も、大切な人が結婚するときにはこの詩を贈りたいなと思います。