ロードムービーの魅力ってなんでしょう。
美しい風景、暖かな人との触れあい、主人公の成長?

距離的な移動を伴う旅の途中、色々な人、景色、価値観に触れながら、達成しようとしている「何か」に向って行く。その中で、主人公が自分との対話を深めていくストーリーに私はいつも惹かれます。

旅することの意味と貴重さをあらためて感じる今、"面白い"ロードムービーとは何か
について考えてみました。


人生で一度でも失敗したことのある人は、きっと元気をもらえるはず2021-12-22 (5).png 398.99 KB
🎬「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」(2014)
「アイアンマン」のジョン・ファヴローが製作・脚本・監督・主演で贈るハートウォーミング・コメディ。オーナーや評論家と衝突してレストランをクビになったシェフの主人公が、フードトラックの移動販売を始め、自らの誇りと家族との絆を取り戻していく姿を描きます。

ロスの一流レストランで総料理長を務める主人公。かつて自分を見出してくれた人気料理評論家が来店するというので新しい斬新なメニューを食べてもらおうと張り切るも、オーナーは「余計なことをするな」と却下。
結局いつも通りの料理を出した挙げ句、評論家には酷評されてしまいます。
「ふざけるな!」とついに怒り爆発した主人公の姿はネットで拡散され、店をクビに。

いわゆる「炎上」で見事に転落していく主人公は、元妻や友人や息子の助けを借り、キューバサンドを中心とした移動販売のフードトラックで再起を目指します。

この転落→再起の構造は、そもそもジョン・ファブロー監督が以前作った「アイアンマン」で成功を収めながらも、続編の「アイアンマン2」で批評家達に酷評されて傷ついてしまったという、自身の人生から作られていると言われています。
だからリアリティがあり心に響くのでしょうか。

譲り受けたボロボロのフードトラックを改装し、マイアミからニューオリンズ、オースティン、ロサンゼルスまで究極のキューバサンドイッチを作って売る旅。
その道中で出会う景色もカラッとしていて魅力的。音楽も明るくていいんです。
   
人生で一度でも失敗したことのある人はきっと元気をもらえるはず。
失敗したことのない人なんていないと思うので、きっとあなたにもおすすめの映画です。


きっと誰もが、孤独で過酷なロードムービーの主人公 2021-12-22 (3).png 408.8 KB
🎬「私に出会うまでの1600キロ(原題:(wild)」(2014)
アメリカ西海岸を南北に縦断する過酷な自然歩道パシフィック・クレスト・トレイル(PCT)に一人で挑み、3ヵ月間で1600kmを踏破した実在の女性シェリル・ストレイドの回顧録を映画化。リース・ウィザースプーン主演、ローラ・ダーン共演。

ひたすら歩き、初めて訪れた場所で初めての経験をし、一期一会を繰り返し、時に挫折しそうになりながら目的地を目指す。
本作の旅路で起きる出来事の多くは人が成長する上で欠かせない人生のファクターと重なり、旅と人生は同義語として描かれています。

なりたい自分自身を自分の中から見つけ、作り上げ、そこへ辿り着こうとする人生という長い長い旅。

本作は、誰もが彼女同様、孤独で過酷なロードムービーの主人公であることに気付かせてくれます。

今この瞬間に何かしらの「困難」にぶつかっている人ほど、受け取るものの多い作品かもしれません。


美しいシーンの数々に、新しい世界へ飛び出す心を刺激される
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🎬「LIFE!」(2013)
ベン・スティラー監督主演のヒューマンコメディ。平凡で退屈な毎日を送り、白昼夢を見ることが唯一の趣味という主人公ウォルターが、ある危機に直面したことから現実世界で大冒険の旅に飛び込みます。

ニューヨークの伝統ある雑誌『LIFE』で写真管理部に勤める空想好きの平凡な男ウォルターが本作の主人公。彼はある日、『LIFE』の最終号を飾るはずだった写真のネガが行方不明になっていることが判明し、追い詰められます。

ネガを探すために仕方なく旅に出るウォルター。目的は、その写真を撮った世界中を冒険する写真家ショーンを探しだし話を聞くこと。

元々、空想好きで引っ込み思案な性格なのに仕方なく旅をすることになってしまうウォルターにとっては、旅に出ること自体がもはやチャレンジ。
そこから彼が出会う様々な出来事は彼を飛躍的に成長させ、観ていて元気をもらえます。

アイスランドの絶景の中でスケボーに乗り疾走するシーンも美しく、最高。
音楽のチョイスもいいんです。


雑念は「2つの軸」の間をさまよっている状態

3作に共通して描かれるのは、旅を通して「いまここ」に集中することで、なりたかった本来の自分自身を発見していく姿。

「いまここ」にいない状態とは、雑念に意識が向いている状態のこと。
雑念は、過去のことと未来のことからなる「時間軸」、自分のことと他人のことからなる「空間軸」の2つの軸でできています。

時間軸をさまよう雑念にとらわれれば、もう変えようがない起きてしまった過去の出来事ばかり考えてしまったり、誰にもわかるはずがない未来のことばかりを考えてしまいます。

空間軸をさまよう雑念にとらわれれば、「なんで自分はいつもこうなんだ」「だから自分はダメなんだ」などと自分を責めたり追い込んだりすることに時間を費やしてしまったり。
「あの人はなんであんなに嫌な人なんだろう」「あの人はきっとこう考えているに違いない」など、本来コントロールすることが出来ない他人という存在に対して過剰に意識が働いてしまいます。


悩むときは、いつも意識が「いまここ」にいない

「過去」「未来」「自分」「他人」。
私たちの普段の意識は、時間軸と空間軸をさまよい、常にこのどこかに遊びに行っている状態です。これ自体は人間にとって必要な機能なので一概に悪いこととは言えませんが、人の大抵の悩み事は、この4つの雑念のどこかに所属します。

「過去の失敗」「未来への不安」「自分への劣等感」「他人への憎しみ」。
悩むときはいつも、意識が「いまここ」に居ないときなんですよね。

「いまここ」に留まり続けなさいということではなく。
意識は「過去」「未来」「自分」「他人」といろんな方向へ遊びにいくけれど、家に帰るかのように「いまここ」に戻ってこられる、ということが大事なのだと思います。


「いまここ」に戻る時間を、意識的に作ってみよう


時間軸では現在進行形で実体のある「今この瞬間」の出来事に対して100%注意を向け、
空間軸では自分/他人という境界線を引かずフェアな目線で全体を俯瞰で観ること。

この2つが共存しているとき、「いまここ」に居るという状態にたどり着けるのだと思います。

旅に出ると、今その瞬間の感じていることや自分の気持ちの動きに注意を向けやすいと感じませんか。
自分とは何か?を追求したり、他者を含めた自分の生きる世界との関わり方を考えることが普段より増えるというひともいるかも。
「いまここ」に戻ることは、日常からはなれて過ごす旅では、きっと普段より達成しやすいのかもしれませんね。

「いまここ」に戻る時間を、意識的に作ってみよう。
観終わったときそんなふうに思える映画が、”面白い”ロードムービーなのかもしれません。



・2857文字(2000字目安をオーバー…)
・画像はamazonのDVDケース写真からお借りしています